接地による、ESD損傷からのPCBの保護
Star Trekの機関室を別とすれば、私は、高校生になるまで、職業として工学を検討したことはありませんでした。とはいうものの、無意識でしたが、間違いなく工学に関心がありました。Star Trekの機関長の名前を全て挙げられたことを考えると、その兆候は早くからありました。しかしながら、ESDブレスレットをプレゼントされてとんでもなく興奮したときに、将来が決まりました。宝石箱に1つぐらいは入っていませんか? このブレスレットは、自分の皮膚に装着する、網目状のゴムと幅広の金属片と、アース端子に接続するワニグチクリップが付いたケーブルで構成されています。当時のインターネットはダイヤルアップ接続のみでしたが、私は、自分を接地する方法を理解するため、ページの読み込みを待って何時間も費やすことを止められませんでした。ブレスレットを身に付け、友人に頼み込んでコンピューターのRAMのアップグレードをやらせてもらったり、単純にコンピューターを開けさせてもらったりしました。
接地は、金属に触れたりすり足をしないなど、簡単にできますが、ESDの影響を受けやすいものを取り扱う前に接地するのが理想的です。
静電放電から保護するための接地の利用は、製品開発の多くの段階で必要です。RAMカードなど、静電気の影響を受けやすい製品を扱っている場合、ESDマットの使用や自分自身の接地などをお勧めします。適切に設計することで、製品に対して接地による保護を適用することもできます。効果的な接地方法をPCB設計に適用し、安全な取り扱いへの依存を減らすほうが得策です。未来の顧客や導入者が全て、静電気の影響を受けやすい製品の取り扱い時に過度に自身を接地すると仮定することは合理的ではない、とSpockなら指摘するところでしょう。
GNDプレーンの使用
ESD保護のために接地を使用する方法は多数ありますが、まず最初に挙げられるのはGNDプレーンの使用です。多層設計の採用は、必ずしも実現可能ではありませんが、ESD保護について不安がある場合、GNDプレーンは本当に役立ちます。ご存知のとおり、突然の電圧放電は電磁場を誘発します。適切に接続されたGNDプレーンは、影響を受けやすいコンポーネントから電流を離して配線することで、電圧放電による損傷を軽減できます。
GNDプレーンを使用すると、GNDトレースへの電源供給における回路ループの領域を減らすことができます。回路ループの領域を減らすと、ループ領域内で誘導されるEMIの総量が減ります。同様に、流れるべきでないコンポーネントに流れる可能性のある対応電流も減ります。
GNDプレーンの保護
優れたGNDプレーンがどれだけ機能できるとしても、ESDパルスが直接GNDプレーンに放電すると、GNDプレーンは影響を受けやすいコンポーネントへの直接経路となる可能性もあります。このような損傷を回避するため、必ず、影響を受けやすいコンポーネントの電源とGNDの間にTVS回路を使用して、誘導された電流を迂回させます。正しく実装された場合、コンポーネントに発生する電圧差は、TVSの制限電圧に留まります。
また、影響を受けやすいコンポーネントの電源とGNDの間に高周波のバイパスコンデンサを使用することもできます。コンデンサは、電荷注入および電源とGNDの間の電圧差を少なくします。これらのコンデンサおよびTVSを、保護に関して懸念されるコンポーネントに近い場所に配置します。
さらに、PCBにコネクタを接続している場合は銅ランドを使用する必要があります。ランドはPCBのGNDから必ず離します。そうしないと、その他のさまざまな保護を導入しても、ESDが全てのコンポーネントに達する、抵抗の小さいやっかいな経路ができてしまいます。また一般に、経路長は可能な限り短くする必要があります。
シャーシGNDの使用
自分自身の接地や、中身を取り出す前のコンピューターのタワーケースと同じように、製品の外部筐体を接地することができます。基板とシャーシでGNDを共有させることで、システム全体の接地を改善できます。シャーシGNDを実装する最も簡単な方法のひとつは、GNDプレーンをシャーシに接続する「シャーシGND用ネジ」の使用です。ただし、十分なスタンドオフを使用していることを確認する必要があります。これにより、他のコンポーネントは、PCBにネジが埋め込まれた際に、クラッシュしたり筐体に短絡したりしません。
シャーシGND用ネジの使用は、外部筐体、そしてアースへのPCBの接地に役立つ可能性があります。
さらに、シャーシGND用ネジを使用した接地は、入力で過渡電圧サプレッサーを使用している場合、ESD保護回路をより効果的にします。誘導コンポーネントを使用することで、必ず、デジタルGNDおよびアナログGNDからシャーシGNDを離してください。そのほうが、GNDへの放電が誤って他の全てのコンポーネントと共有されることがありません。
高速回路を設計している場合、パフォーマンス向上のための最適化はいつでも難しい作業です。これは、シャーシやPCBレイヤーのように、複数のGNDプレーンに渡って配線している場合に特に当てはまります。最良のシナリオでは、シャーシGNDをアースに直接接続できます。それができない場合は、全てのGNDプレーンを相互に密に結合しておきます。それにより、主要コンポーネントの周辺の「GNDシフト」が最小限になります。
シャーシに対してアースを使用している場合、Texas Instrumentsは、TVSのGNDと予期されるESDソース(通常は入力のコネクターシールド)のGNDの両方に「直接隣接する」ように配置ことを推奨しています。
悪意のない指でも、PCBのインストール、クリーニング、検査の際、意図せず多くの損傷を与える可能性があります。
設計に優れた接地を組み込むことで、悪意はないが、不器用な、あるいは探求心のある指によって生じる多くの損傷を回避できます。そして、筐体やスタンドオフのプランに複雑なレイヤーが追加される一方で、設計を再設計する多くの時間を節約することができます。増大した複雑さを管理できるPCBツールのひとつに、Altiumの3D Clearance Checkingがあります。Altiumに基板や筐体の物理的スペースを管理させ、設計者は設計の残りの部分に集中することができます。今すぐAltiumを使って、優良な接地を組み込みましょう!