Altium Designerで回路図を作成する方法: 1000枚のPCBの道も一歩から
想像してください。今あなたは、4年間使ったPCB設計ソフトウェアOrCADからアップグレードして、Altium Designerを使い始めようとしています。変化にワクワクしつつも、この統合設計環境のすべてのツールの機能を習得するまではそれなりの苦労を覚悟していることでしょう。条件反射的に慣れ親しんだやり方でやってしまい、実はもっとスムーズなやり方があったとあとで分かる、ということもあるでしょう。
でも、ちょっと待ってください—本格的にツールの習得に取りかかる前に、欠かすことのできない大切なステップがあります。そもそも回路図はどうやって作ればよいのでしょう?今はあまりの機能の多さに圧倒されているかもしれませんが、ご安心ください。この道何十年の大ベテランでも、設計やエンジニアリングのキャリアを歩みはじめたばかりの方でも、Altium Designerを使うすべての設計者が一度は通った道です。
ソフトウェアを細かく段階分けすることで、少しずつ、無理なく取りかかることができます。完全に動作する基板を作るという最終目標に向けて、まずは最初の一歩として基板の基礎となる回路図を作りましょう。
シンプルなオーディオアンプを使って回路図を作成する方法
私はオーディオ回路が大好きです。既製の基板を使ってスピーカーを作ったことは何度かありますが、実際に自分で設計したことはありません。そこで、今回の初めての基板として、私の次のプロジェクトにそのまま利用できるような完全に動作するオーディオアンプを作ることにしました。
ベースとして選択したのは、LM386を使用した極めてシンプルなアンプです。コンポーネントの数が最小限なので、第一歩にはぴったりです。特に初めて回路図を作成するとき、ツールや機能に慣れるために一番いいのは、設計で追加する余地が大きい最小限の部品を選択することです。
最終的なイメージが分かるよう、これから設計するアンプ回路図の最終形を以下に示します。
完成したシンプルなオーディオアンプのAltium Designer回路図
新しい回路図を開く
どんなプロジェクトであっても最初にやることと言えばもちろん、コーヒーをいれて、朝のストレッチをした後、新しいPCBプロジェクトを開くことです。手順は、[File] » [New] » [Project] » [PCB Project] を選択するだけです。
プロジェクトが開いたら、新しい回路図シートを作成して、そこにコンポーネントを配置します。作成したPCBプロジェクトを右クリックして [Add New to Project] » [Schematic] を選択します。
そうすると、回路図を作成するための白紙のキャンバスが表示されます。どうでしょうか? — このあたりで5分間休憩にしましょうか。
コンポーネントライブラリを追加する
Altium Designerにコンポーネントライブラリを追加して回路図に必要なコンポーネントを配置する方法については、既に別の記事で紹介したとおりです。今回は、一般的なLM386オペアンプを使用するので、Texas InstrumentsのAmplifiers and Linear Special Functionsライブラリを追加します。
この手順に自信がない方は、先ほど紹介した記事をお気に入りに入れるなどして、今後設計するときに、アルティウムが提供するすべてのコンポーネントライブラリを使用できるようにしておきましょう。
真っ先にやること: 中心となるコンポーネントを配置する
さあ、休憩が終わり、コーヒーのおかわりも準備万端、コンポーネントライブラリの更新もできたところで、いよいよ回路図を描いていきましょう。私がいつも真っ先にやるのは、回路の中核となる初期のコンポーネントを配置することです。今回の場合、ページの真ん中にLM386を配置します。
ライブラリ検索バーでLM386を検索すると、いくつか選択肢が表示されます。ここでは1つ目の部品(LM386M-1)を初期部品として選択しました。このコンポーネント名は設計中に多少変更できます。
ICをクリックして回路図ページにドラッグするだけで、コンポーネントが配置されます。画面は次のようになります。
ICが1つ配置された、ほぼ空のAltium Designer回路図
設計作業を何から始めるかは人それぞれです。独自の設計プロセスを使用して回路図にコンポーネントを配置している方もいらっしゃるでしょう。でも私は、中心となるコンポーネントを先に用意して、周りにリファレンスコンポーネントを配置していくのが好きで、いつもそうしています。
各コンポーネントの値を編集する
お気付きかもしれませんが、このICの部品番号(LM386)とデジグネータ(U1)は、ライブラリで提供されたものとは少し違っています。末尾の「M-1」を削除して、ICを汎用化しました。最終PCBの形態によっては、異なる実装方法が必要になる場合があるためです。
ICの値は、その値の上でダブルクリックするだけで編集できます。右側の検索バーに値を入力するよう求められます。
中心となるICを配置した回路図でコンポーネントプロパティを表示
適切な部品番号とデジグネータを入力したら、他のコンポーネントも配置していきましょう。
リファレンスコンポーネントを回路図に配置する
最初のステップと同様に、ライブラリデータベースを検索して、中心的ICの周りに配置する基本的なリファレンスコンポーネント(コンデンサー、抵抗、バッテリー電源、スピーカー)を探します。これで必要な回路図コンポーネントがほぼ揃います。
ここでは、Texas Instrumentsライブラリを検索するのではなく、Miscellaneous Devicesライブラリを使用して、たたき台のコンポーネントを検索しました。先ほどお見せしたように値は設計中に変更できますから、ベースにするコンポーネントを選択して、あとから必要な値に変更すればよいのです。
重要なポイントは、設計要件に従ってコンポーネントにラベルを付け、値を変更し、必要な文書に記録しておくことです。このアンプ設計の場合、最終的なコンポーネント配置は次のようになります。
必要なコンポーネントが配置された回路図
基板上にすべてのコンポーネントを配置した後、コンポーネント間を適切に接続できるようになります。
オーディオ入力ソース用ポートを追加する
当然ですが、設計中に参照情報を配置しなければならないことはよくあります。このアンプで言えば、オーディオ入力がどこからやってくるかを書いておかなければなりません。でも、オーディオ入力の場所を書いた付箋をベタベタと貼り付ける必要はありません。回路図にあとから編集可能なポートを追加するだけでOKです。
ポートを配置するには(参照情報として、もしくは必要なとき)、上部ツールバーで [Place Port] を選択し、コンポーネントを配置するときと同じようにそのリファレンスを回路図に配置します。
テキストは自由に変更できますが、もしポートタグに自分用の不真面目なメモを書いた場合は、チームに回路図を納品する前に削除することをお勧めします。追加されたポートの例を以下に示します。
参照ポートが左側に追加された回路図
GNDを回路図に配置する
設計フローの次のステップは、GNDの追加です。何と言っても、GNDなくして回路は完成しません。GNDを追加するのはこれがベストなタイミングだと思います。
ポートを回路図に配置するときと同じように、上部ツールバーで [GND Power Port] を選択します。回路図上の特定のピンに必要なGNDを配置していきます。必要な接地のベストプラクティスに従うことは大前提ですが、GNDの追加は非常に簡単です。Altium Designerは、回路図作成プロセスの重要なステップが直感的に行えるように設計されています。
面積にあまり余裕がない場合も、ピンから離れたところに配置し、次のステップで接続すれば大丈夫です。完了すると、基板は以下のようになります。
回路図にGNDを追加して必要なコンポーネントに配置
ワイヤをクリーンに保つ
これで回路図作成の最初の段階はほぼ終わりです。でも、次の休憩に入る前に、ワイヤを接続しておく必要があります。コンポーネント間を適切に接続するには、上部ツールバーで [Place Wire] ツールを選択します。
ここからは、ワイヤの始点とするピンを選択し、続けて終点のピンを選択するだけで接続作業を行えます。この例の場合、既に確立されたデザインを使用しており、どのコンポーネントをどのコンポーネントに接続するか分かっているので、接続は簡単です。
ここに書いた手順をそのまま実行した場合も、独自のシンプルなデザインで行った場合も、以下に示すのと同じか、これと似た回路図が出来上がっているはずです。
中心となるICを配置した回路図でコンポーネントプロパティを表示
信じられないかもしれませんが、これでAltium Designerで作る初めての回路図の出来上がりです。オリジナルの基板をつくる第一歩を踏み出したのです。自分のことを褒めてあげてください。名前を付けてすべてを保存して、物理的なPCBレイアウトを作成する次のステップに備えましょう。
これはAltium Designerの回路図キャプチャ機能の非常に基本的な例ですが、回路図キャプチャツールを使いこなして作業効率をアップするためのオンラインリソースが豊富に用意されています。
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