Uターンはしたくない: PCBのトレース配線に関するガイドライン
自分が生まれ育った町の当時の姿を思い出すのは、お気に入りのテレビ番組のエンディングや、映画の名作が公開されてから何年も後に続編を観ることにとても似ています。私が育った町には碁盤目状のとても広い通りがあったため、繁華街でも縦列駐車をする必要がありませんでした。ただし、町はとても小さく、2人の運転手が車が一時停止して話をしていると渋滞が発生してしまいます。それは交通事故よりもよくある光景でした。久しぶりに故郷を訪れてみると、町は変わっていました。広い駐車スペースがなくなり、新しい車線が追加されていたのです。
隠喩的にも文字通りにとらえても、町は私が子どもの頃よりずっと新しくなっていました。確かに交通事故や渋滞は増えたものの、先見性のある都市計画によって、町が乱雑にならないように維持されています。PCBもこれと同じで、流れを妨げたり、エラーを引き起こしたりする重大な事故や失敗は、適切な計画によって回避できます。正しいPCB設計とは、単に交通警官を横断歩道に配備することにとどまりません。許容できるだけのスムーズなレベルで交通の流れを維持するには、必要になる電源回路とコンポーネントの接続についてかなり早い段階から把握して設計を進めなければなりません。
PCB設計のトレース配線では、都市計画と同じくらい注意が必要になります。不適切な配線が交通事故を起こしたり、何百人もの人々を仕事に遅刻させたりすることはありませんが、ショートを発生させることはあります。比較的交通量の少ない道路に無駄に長い信号があったり、交通量の多い交差点のそばに一時停止の標識がなかったりするのと同じように、間違ったトレース配線では半田接合の品質が損なわれるほか、内層のトレースがショートを引き起こすこともあります。トレース配線についてよく理解しておけば、発生する「交通量」に対応するPCBを設計できるようになります。
この交差点のように配線しないでください。1つのノードに多くの接続がありすぎると、ショートの危険が高くなります。
PCBのトレース配線でブレーキを踏むタイミング
トレースの配線は、赤信号でも黄色信号でも青信号でもありません。ご存知のように、黄色信号に対する解釈は運転手によって違うため、より多くの要素がトレースに影響することになります。製造時と稼働時にショートが発生する可能性に影響を及ぼす要素は下記のとおりです。
- トレース幅: 道路の幅を変更するのと同じように、トレース幅は流せる電流量に影響を及ぼします。小さな通りに新しい店が開店したときのように、オーバーロードはたくさんの問題を引き起こします。パッドに接続する前にトレースの幅を狭めると、それによって抵抗、付随する加熱、基板の損傷が増加します。概して、トレース幅を狭めるのは好ましくありません。
- 接続: パッドやノードへの接続数を増やすと、ショートが発生するリスクが高くなります。分岐させたトレースはさらに近接する可能性が高くなり、より多くの角に電荷が蓄積することになります。さらに一般的である不均一な半田ペーストは、コンポーネントの傾きや半田ブリッジの原因になります。1つのパッドで多数のトレースを接続する必要のあるネットやオートルーターの出力については慎重に判断するようにしてください。
- パッドのサイズ : パッドが大きくなるほど作業できる領域が拡大しますが、パッド間の距離も考慮に入れておく必要があります。ここでは半田ブリッジが発生しやすいですが、ギャップが大きいほど半田ブリッジが発生しにくくなります。
- 一貫したサイズ: パッドとトレースのサイズを一貫させると、特に多層基板に対処している場合に、デザインルール チェックとエラールール チェックを想定通りに進めることができます。許可をもらう役所が面倒なように、特にいくつもの警告を修正する必要がある場合はルールが煩わしく感じますが、通常は後でもっと大きな問題が発生するのを阻止できます。
- 角: トレースを急カーブさせると、電界の電位が増加する場所が作られます。優れた製造業者は角に対応できるものの、基板の稼働時のアーク放電やショートといった機能的なリスクが増加します。そのため、半径が大きくて丸みを帯びた角を使用するようにしてください。
高速道路のカーブと同様に、PCBのトレースでは鋭角を避けてください。これは、アーク放電のリスクを増加させ、ショートの発生につながるためです。
トレース配線のベストプラクティス
通常、道路の秩序を乱しがちな運転手は、その地域のことをあまりよく知らない人たちです。これと同じく、不適切な配線を行って基板をショートさせる可能性が高い設計者は、トレース配線についてきちんと理解していません。トレース配線に影響を及ぼすものについて把握しておくと、下記のベストプラクティスを理解、実践するのがはるかに簡単になります。その結果、基板がショートする可能性が軽減し、より望ましい機能性を確保できます。トレース配線に関して私が見つけたベストプラクティスは下記のとおりです。
- 配線を開始する前に、トレース幅と間隔に対する製造業者の制約事項を確認する
- 電流負荷に対して最適なトレース幅にする
- 幅の狭いトレースや間隔が必要でない場合は、幅を広げたデザインルールを使用する(そのほうが容易でコストも安い)
- トレースを短くして直接配線にする(…の場合は最も簡単)
- 基板上で関連するコンポーネントをグループ化する
- 配線では急カーブを避ける
交通事故が混雑した道路で起こりやすいように、トレース配線が多数ある領域では欠陥率が高くなる傾向があります。個々のトレースに付随するすべてのリスクが組み合わさると、すべてを狭いスペースに収めるために妥協を強いられることになります。部品の位置を最適化し、高密度の領域を最小限にするには、前もってレイアウトを計画しておくことが重要です。
高密度のトレース配線が必要な場合は、基板の性能に対処できる設計ツールを使用しなければなりません。その優れた選択肢は、指定した要件に合わせてデザインルールをカスタマイズできるAltiumのCircuitStudioでしょう。
設計プロジェクトに対応する優れたトレースを確保する方法やトレース配線の仕様に関する詳細については、アルティウムの専門家にお問い合わせください。