高速PCB設計入門: クロストークの除去方法
最近、結婚披露宴で、同じテーブルに座っている男性と話をしようとしました。残念なことに、私たちの間に座っていた女性が、私の反対側に座っている人と会話を続けていました。披露宴の騒音を背景に会話することは、何より難しいことでした。私たちの間でもう1つ話し合いが行われていたために、会話が成り立ちませんでした。私たちは、クロストークしていたのです!
会話中のクロストークはとても迷惑なものですが、PCBレイアウト上のクロストークは、悲惨な結果を招く可能性があります。クロストークが修正されない場合、完成した回路基板が まったく動作しないか、あるいは断続的な問題に悩まされる可能性があります。クロストークとは何か、また、それを防ぐためにできることは何かを見てみましょう。
高速PCB設計におけるクロストークとは?
クロストークは、 PCB上にあるトレース間の意図しない電磁結合 です。この結合によって、物理的に互いに接触していない場合でも、一方のトレースの信号パルスがもう一方のトレースの信号を圧倒してしまう可能性があります。これは、並列トレース間の間隔が狭い場合に、発生する可能性があります。トレースが製造目的での最小間隔を維持していたとしても、電磁目的では十分ではない場合があるのです。
互いに並行に走っている2つのトレースを考えてみてください。一方のトレースの信号の振幅がもう一方のトレースよりも大きい場合、片方のトレースに積極的に影響を与えてしまう可能性があります。そして「被害者」トレースの信号は、それ自体の信号を伝導する代わりに、攻撃者トレースの特徴を模倣し始めます。これにより、クロストークが発生します。
クロストークは通常、同じ層の上で隣り合って走る2つの並列トレース間で発生すると考えられています。しかし、隣接する層の上で隣り合って走る2つの並行トレース間でクロストークが発生する可能性は、さらに大きくなります。これは、 ブロードサイド結合と呼ばれ、2つの隣接する信号層が非常に薄いコア厚で分離されているために、発生する可能性が高くなります。この厚さは4ミル(0.1ミリメートル)になることもあり、同じ層の上にある2つのトレース間の間隔よりも小さい場合があります。
クロストークを除去するためのトレース間隔は一般的に通常のトレース間隔の必要条件よりも大きい
設計からクロストークの可能性を除去
幸運なことに皆さんは、クロストークのなすがままではありません。クロストークの可能性を最小限に抑えるように基板を設計すれば、これらの問題を回避できるのです。基板上のクロストークの可能性をなくすために役立つ設計テクニックを、いくつかご紹介します。
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差動ペアと他の信号配線の間の距離を、できるだけ大きく保ちます。 経験則 は、ギャップ = トレース幅の3倍です。
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クロック配線と他の信号配線との差を、できるだけ大きく保ちます。ここでも、同じギャップ = 3倍のトレース幅の経験則が有効です。
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差動ペアの異なるセットの間の距離を、できるだけ大きく保ちます。 ここでの経験則 は、わずかに大きく、ギャップ = トレース幅の5倍です。
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非同期信号(RESET、INTERRUPTなど)は、バスや高速信号から離して配線する必要があります。ただし、オン/オフ信号またはパワーアップ信号は、基板の通常の動作中に使用されることがほとんどないため、これらの信号の隣に配線することも可能です。
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基板のスタックアップで互いに隣接する2つの信号層を、水平方向と垂直方向で交互に配線するようにしてください。トレースを互いに並行して走らせないことで、ブロードサイド結合の可能性が低くなります。
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隣接する2つの信号層間の潜在的なクロストークを減らすためのより良い方法は、 マイクロストリップ構成において信号層間にGNDプレーン層を挟んで、層を分離することです。GNDプレーンは、2つの信号層間の距離を増加させるだけでなく、信号層に必要な リターンパスも提供します。
PCB設計ツールとサードバーティ製アプリケーションによりクロストークを除去
設計ソフトウェアによって、高速PCB設計でクロストークを除去する方法
PCB設計ツールには多くの機能が組み込まれており、設計でクロストークを回避できます。基板層ルールを使用すると、配線方向を指定してマイクロストリップ スタックを作成することで、ブロードサイド結合を回避できます。ネットクラスルールを使用することで、クロストークの影響を受けやすいネットのグループに、より大きなトレース間隔を割り当てることができます。差分ペアルーターは、差分ペアを個別に配線するのではなく、実際のペアとしてまとめて配線します。これによって、クロストークを回避するための、差動ペアトレースの相互のおよび他のネットとの必要な間隔が維持されます。
IPCB設計ソフトウェアの組み込み機能に加えて、高速PCB設計でクロストークを除去するのに役立つ別のツールもあります。さまざまなクロストーク計算機が利用できるので、配線の適切なトレース幅と間隔の決定に役立ちます。また、潜在的なクロストークの問題について設計を分析するための、 シグナルインテグリティ シミュレータ もあります。
クロストークの発生が許されてしまうと、プリント回路基板上で大きな問題となることがあります。しかし、これで何を探すべきかがわかったので、クロストークの発生を防ぐための準備が整っています。ここで説明した設計のヒントとPCB設計ソフトウェアの機能により、クロストークのない設計を作成できます。
Altium Designerなどの基板設計CADには、 ここで説明した高度な機能がすでに組み込まれています。PCB設計のクロストークやその他のシグナルインテグリティの問題を解決するために、Altium Designerがどのように役立つかについて詳しくお知りになりたい方は、アルティウムのエキスパートにお問合せください。