クラウドのPCB設計ソリューションで特殊な海底車両の開発期間を大幅に短縮

Masha Petrova
|  投稿日 May 27, 2020  |  更新日 October 23, 2020
team Collaboration with Altium 365

 

米国のモントレー湾水族館研究所(MBARI: Monterey Bay Aquarium Research Institute)は30年以上にわたって海洋を研究し、軸上海山や海底活火山からオレゴン州沿岸に沿ったファンデフカ海嶺や、北極の泥の中にあるメタンや炭化水素などあらゆるものを調査してきました。

MBARIの大規模な調査は、海洋へのストレス因子の生物学的反応に焦点を当てたもので、気候変動の範囲をより包括的に理解するための最高の情報源となっています。

気候変動の現象が最も短期間で現れるのは、海洋および沿岸地域です。地球の海洋の変化は比較的低速ですが、温度の定常的な上昇、季節による変動、および大きな出来事が大きな影響を及ぼし、海中生物が海底から中層部や上層部に移動することがあります。

毎年、最大150日間にわたり、海面下3,000から4,000メートルの深海マッピング、ソナーデータ収集、乱流や生物発光の測定などの方法で、これらのプロセスの変化を調査してきました。 

 

Mechanical CAD Aspect Design

 

これらの変動調査を行うため、MBARIは長距離自律型海底車両(LRAUV: Long-Range Autonomous Underwater Vehicle)など独自のテクノロジーを使用しています。LRAUVは30日ごとに測定、収集、写真撮影を行うよう設計されています。

PCB設計ツールのAltium DesignerおよびAltium 365は、これらの自律型海底車両(AUV: Autonomous Underwater Vehicle)を設計する上で重要な役割を果たし、MBARIの最も重要な任務を可能にするとともに、開発期間を劇的に短縮しました。

Altium 365は、基板CAD固有のインテリジェンスを活用して設計データを格納し、プロジェクトやバージョン履歴にWebからアクセスし、Webで簡単に操作できるようにします。これによってMBARIの調査、および開発チームは、海上も含めて世界のどこからでも作業を行えます。 

Altium Designerで最初から的確な作業進行を実現

LRAUVやAUVの設計においては、5,000Wのリチウムイオン電池を密閉された薄い金属の圧力容器に格納するなど、多くの機能を非常に小さな容積に収納する必要があります。

MBARIの海洋活動部門のAUV指導者であるHans Thomas氏は、「私たちのグループは、複雑なアセンブリを構築する必要があります。たとえば、圧力容器内にすべての固定部品が緊密に格納され、それらの部品と接続するPCBなどです。Altium Designerは設計の機械的CADの部分と密接に連携可能なため、時間の節約にもなりますし、製造プロセスの後の段階でエラーの可能性を減らすう上でも役に立っています」と述べます。

Altium Designerには、統合されたAltium 365プラットフォームから簡単にアクセスできます。Altium Designerは、Thomas氏のチームが使用している機械的CADツールとシームレスに統合できるため、とてもありがたい存在です。

Thomas氏は、「私たちの作業では、基板上の全てのコンポーネントがAUVシャーシに必ず収まるようにしなければなりません。Altium Designerを使用すれば、全てのコンポーネントがどのように収納されるかを早めに確認できます。Altium Designerの包括的な部品ライブラリによって、より高度な部品の使用も簡単に行えます。必要な部品を1か所で全て見つけられるので、大幅な時間の節約になりました」と述べています。 

 

Schematic to 3Dview with Altium Desgner

 

高度な統合によるシームレスな設計

Thomas氏とチームは、設計プロセスのさまざまな段階で回路図とフットプリントを調整できなければなりませんでした。これは、AUV用のカスタムPCBを設計する際に使用できる物理的な容積が限られていることだけが理由ではありません。

海底車両はきわめて特殊な用途に特化しており、いくつものリチウムイオンバッテリーを必要とします。その中には、密閉されたシャーシ内に複数のコンポーネントとともに、カスタマイズされた3枚のPCBに取り付けられる55個のバッテリーもあります。そのため、Thomas氏とチームは、基板が適切に収納されることを、設計の早期段階で確認しなければなりません。基板の製造には約5,000ドルのコストを要するため、失敗はほぼ許されません。

幸い、Altium Designerがあれば、製造に入るはるか前の段階で変更を簡単に加えることができます。Thomas氏は、「マネージャーの仕事は、PCB設計のWordドキュメントやPDFを見ることだけではありません。Altium 365があれば、回路図から3Dビューまで基板全体を確認して共有できます。設計のどこかが変更されると、精密な追跡、フットプリント、レビジョンが得られるので、バージョンコントロールが非常に簡単で、書面による追跡は不要になります。これにより、設計、および製造プロセス全般が迅速化され、簡単になりました」と説明しています。

さらに、Thomas氏は、「設計段階で電気技術者や機械技術者と協力することは、私たちにとって非常に重要でした。私たちの設計は大きな電力を使用するため、電流密度の高いトレースをAltium Designer内で識別できたことはとても助かりました。高電流の設計を行う場合、問題を早期段階で捕捉できることは極めて重要です。最初からすべてがうまくいったのは素晴らしいことです」とも述べています。

Altium 365が加わったことにより、Thomas氏は海上からでも設計にアクセス可能となり、リモート作業の可能性がさらに大きく広がりました。 

 

PCB Design fit with Altoum Designer

 

データを提供し、基本調査を推進

数週間から数か月も水中に置かれたまま動作する堅牢なLRAUVやAUVを短期間で開発および製造可能になったため、MBARIは車両を1年に100~150日間続けて配備し、毎月、新しい任務を立ち上げられるようになりました。

海洋の変化を調査することで、MBARIは気候変動、海洋での主な出来事、有害な浮遊生物の急増、そしてそれらが沿岸地域にもたらす影響などを把握するため不可欠なデータを得られるようになりました。

これらの基本データは、包括的な状況の理解や、気候変動を抑止し世界の海洋を保護するための有効な対策、たとえば炭素の排出量低減方法や、プラスチックや他の生物分解性でない材料に代わる現実的な代替品の開発などを主導する上で役立ちます。Monterey Bay Aquarium Research Instituteは、この繊細な地球環境を保護する活動を続けています。海底を走り回る車両をしっかりと作り上げる作業において、 アルティウムもその小さな一翼を担っています。

Under Water Vehicle

 

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筆者について

筆者について

Masha Petrova is a VP of Brand Marketing at Altium.  She has a passion for bridging the communication gap between business leaders, developers and customers. After receiving her PhD in aerospace engineering from UC San Diego, she spent 15+ years in hi tech and engineering software industries.

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