組み込みソフトウェア開発のためのリスク管理
成功したダウンヒルスキーヤー、F1レーサー、登山家に共通するものは何でしょう? そのスポーツについて、できるだけ多くのことを学び、最高の道具を使用していることです。このアプローチを取ることによって、単なるリスクを、明確な見返りのある計算されたリスクに変えるのです。しかし、組み込みソフトウェアの開発は危険なスポーツではない、と言われるかもしれません…
実際には、先進運転支援システム(ADAS)アプリケーションや自動運転アプリケーション用の埋め込みソフトウェア開発は、考えているよりリスクの大きい場合があります。少なくとも、ほぼ時速160 kmで山を滑り降りたり、またはむき出しの断崖の表面を登ったりする人たちのように、リスクを減らすのに必要な知識とツールを蓄積している場合を除いて。
うまくいかないのは何か?
ADASや自動運転技術は、組み込みソフトウェア、マイクロプロセッサ、プリント基板(PCB) を組み合わせた組み込みソリューションによって、アダプティブクルーズコントロール、車線逸脱警告、自動シフトなどの機能を可能にしています。我々は皆、電子機器の誤動作を目にしたことがあります。Microsoft Windows®の死のブルースクリーンを考えてください。しかし、車が時速110 kmで走行中、急にギアがバックに入った場合や、センサーが物体の距離を間違えて計算した場合、ブレーキが予想通りにきかなかった場合、大けがや死に至る場合さえあります。
電子排出ガスコントロールなど、組み込みソフトウェアのさほどドラマチックでない不具合でさえ、巨額の損失や評判への大きなダメージに至る場合があります。(フォルクスワーゲンの場合、「排出ガス不正問題」の後、株価は25%下落しました。)
組み込みソフトウェア企業が行うべきこととは?
ADASアプリケーションや自動運転アプリケーション用の組み込みソフトウェア開発には、関連するビジネスリスクが存在しますが、自動車業界で最も活発な市場で取り残されるという、同様に迫り来る危険を受け入れる余裕のある車載組み込みソフトウェア企業は、ありません。2020年まで年平均成長率(CAGR)が16%~18%になると推計される、ADASの世界市場は、大きな収益を生む可能性を示しています。同様に、IHS Automotiveは、自動運転車市場の、2025年から2035年までの、年平均成長率が43%に達する、と予測しています。
ADASや自動運転の組み込みソフトウェア開発のビジネスリスクを軽減するのに役立つアイデアをいくつか示します:
· 安全基準について学び、それらを開発サイクルに統合する
· 安全認定ハードウェアを使用する
· ハードウェアの安全性やパフォーマンスの機能を活用できるASPICE®レベル2認定のコンパイラ、デバッガ、リンカーを選択する
· ドライバーの注意が散漫になるリスクを低減するよう、組み込みソリューションを設計する
· 組み込みソフトウェア設計に監視機能と冗長性を取り入れ、リアルタイムでエラーを検出する
· 暗号化およびパフォーマンスライブラリを活用し、安全で高性能なコードを構築する
· 緊急を要する組み込みアプリケーションには、RTOS(リアルタイムオペレーティングシステム)の設定とデバッグを実行できることを確認する
· 位置に依存しない実行可能ファイルを使用して、組み込みソフトウェアの無線通信の (OTA)更新を計画する
F1レーサーは、自身の車を知り信頼しており、コースを知っています。過度のリスクなしに時速320 km超で走行できます。同様に、最高のハードウェアと組み込みソフトウェア開発ツールを選択し、自動車の安全基準を順守し、安全性とセキュリティを組み込みソフトウェア設計に統合することによって、組み込みソフトウェア企業を加速させ、最高のADASアプリケーションや自動運転アプリケーションを設計するレースで先頭に立つことができます。
詳しくは、ホワイトペーパー “Taking the Business Risk Out of ADAS Development ”(ADAS開発のビジネスリスクをなくす)。