電源解析が効果的なPCB設計に不可欠な理由

投稿日 May 2, 2017
更新日 December 5, 2020

この焦げる臭いは何でしょう? 自分の試作でないことを願います。
 

以前、愚かにも木工をやってみようと決心したことがあります。ロッキングチェアのように、何か簡単なものから始めようと考えました。構造や静力学に関する限られた知識を使って、座った途端にばらばらに壊れる椅子を作るのに成功しました。使用したYouTubeのチュートリアルでは、座ると椅子が崩壊する部分には触れていませんでした。普通は、何か作ったら、物理的にテストする前にその道のエキスパートに見てもらうのが良いのでしょう。同じことがPCB設計にも言えます。たとえ優れた設計者であっても、電源のエキスパートであるとは限りません。アルティウムの電源解析ツール PDN Analyzer ご利用のパーソナルコンピュータに、電力のプロが持つ知識を全て提供してくれます。優れた電源解析プログラムでは、発火する試作にお金を使う前に、電流密度、温度の問題、電圧降下をチェックできます。

 

電流密度と温度

私は、ロッキングチェアを作るとき、支柱の幅を決めるのに、古い「じっと見る」方法を採用しました。そして、その方法では尻もちをつくことが判明しました。PCBのトレースを設計するときにも、同様の方法を採用できます。見て良さそうな幅を選択して配置すると、何がまずいのでしょう? 基板が焼けるかもしれません。電源プレーンがスイスチーズのように見えたり、ビアの負荷が大きすぎると、電流密度や温度が高くなります。電力消費が多い集積回路(IC)を使うと、PCBで発熱が増える場合があります。

電源プレーン: 製品を「過剰に設計」したいとは思いませんが、銅箔のことになると誰も気にかけません。問題が発生するのは、電源プレーンを追加しすぎた場合のみです。とは言っても、設計がますます小さくなる中、電源プレーンは、しばしばサイズが小さくなったり、奇妙な形に変わったります。電源プレーンが小さくなると、過度の電流密度でボトルネックができる場合があります

ビア: ビアも重要です。ビアの設計でEMIを減らすのに忙しすぎて、ビアが電流にどう関連するかを考えることができません。しかし、ビアは、PCB上に電流を充満させる場合があります。電流密度が高いと高温になり、時にはトレースを溶かすほど高温になることを思い出してください。

IC: 食べ過ぎると、普通の椅子でも重量制限を超える場合があります。新しいICは、多くの電流を消費し、公称トレースの限界を超える場合があります。最近の電子機器は、ますます高速のICを必要としており、より多くの電力を消費します。試作から煙が出始めるまで、どれほどの電流を取り込んでいるか考えないかもしれませんが。

 

amp meter measuring current

あいにくPCB用の電流計は買えない
 

電源解析ツールを使用すると、設計段階で電流密度を確認できます。多くの電源解析ツールは、設計で電流密度の高い領域を視覚的に示します。温度は表示されない場合もありますが、PCBの熱は、電流に直接関係しています。したがって、一石二鳥で、PCBの電流と温度が高すぎる場所を確認できます。その後、両方の問題を軽減するのに十分な銅箔を追加するだけで済みます。

 

電圧降下

全ての電気技術者は、「V = IR」という呪文を覚える必要があります。伝説によれば、十分な回数唱えると、電気実験とロッキングチェアの祖であるベンジャミン・フランクリンが現れるそうです。その呪文は、IR(電圧)降下を低減するためにネットを設計するとき、思い出すことが重要です。最近のチップの多くは、大きな電流を取り込むだけでなく、低電圧で動作します。6V ICを使用している場合、電圧降下はあまり気にならないでしょう。一方、ICが2Vで動作している場合には、突然、電圧降下が少しでもあれば問題になります。できるだけ電圧降下を減らすよう、設計戦略を更新する必要があります。

それでは、IRドロップを減らす最も良い方法は何でしょう? それは、名前を見れば明らかです。電流、抵抗、またはその両方を減らす必要があります。導体の電流を減らす最も良い方法は、その幅を広げることです。金属が多いほど、電流密度は低く、電圧降下は小さくなります。抵抗を減らすには、トレースを短くします。金属が少ないほど、抵抗は小さくなります。残念ながら、この2つの推奨事項は相反します。電流を減らすには銅箔を増やすのに、抵抗を減らすには銅箔を減らします。幸い、優れた電源解析ツールは、どちらのテクニックを選択すべきかを判断するのに役立ちます。電源解析ツールが、基板の電圧降下を視覚的に示してくれるはずです。レイアウトに応じて、IRドロップを軽減する方法を判断できます。例えば、短く薄いトレースにIRドロップの問題が発生している場合は、トレースの幅を広げます。長いトレースで降下が大きすぎる場合には、トレースを短くするため、コンポーネントをあちこち移動してみてください。

 

man banging head on laptop

こうならないように電源解析ツールを使用する
 

私は、何か座るものを作るのは簡単だと思っていましたが、間違っていました。電源解析の背後にある概念は単純ですが、ソリューションを見つけるための数学は複雑です。設計中にはPDNの問題を無視し、「試行錯誤」のプロトタイプを繰り返し使用する代わりに、シミュレーターを使用してください。電源解析ツールが、計算してくれて、問題がどこにあるかを教えてくれます。そうすれば、最初の試作をテストする際に、ばらばらに壊れることはないと確信できます。

私がずっと「優れた」電源解析ツールと言ってきたのには、理由があります。複雑な波形だけを出力し、頭痛の種になるだけのシミュレーションツールもあるからです。理解できなければPCB設計ツールは役に立ちません。アルティウムの電源解析ツールは、ビジュアルインターフェイスを使用し、基板の電流密度やIRドロップの問題を正確に指摘します。試作を燃やさずに済むよう、使用してください。

 

電源解析について、まだ疑問をお持ちですか? アルティウムのエキスパートまでお問い合わせください。

 

 

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