Altium Designerでの降圧コンバータシミュレーション
新しいPCBを構築するには電源が必要で、供給が必要な電力は多くの場合、ノイズが多くて規制されていない電源から降圧されます。たとえば、全波整流器の出力ポートからの出力には、多少の残留リップルが含まれています。別の例としては、上流のコンバータからのノイズが挙げられます。あるいは、バッテリーから電力の供給を受ける場合、バッテリーの電圧/電流出力は時間とともに、または温度によって変化します。
どのような状況でも、通常は販売業者から適切なDC-DCコンバータやLDOを見つけて、簡単に基板に追加できます。大電力の回路 (通常は電圧か電流、またはこれら両方が非常に大きい) を設計するときは、レギュレーターを最初から設計し、PCBレイアウトに配置する必要があります。降圧コンバータの設計の一部として、Altium Designerの回路図エディターから直接、降圧コンバータ シミュレーションを簡単に実行できます。この記事では、最新バージョンのAltium Designerでこれらの機能を使用する方法について説明します。
降圧コンバータ シミュレーションの開始
Altium Designerの回路図エディターには、設計データから直接、シミュレーションを作成するためのSPICEベースのエンジンが含まれています。他のプラットフォームにも同様のツールが存在しますが、最終的には解析用に設計データとシミュレーション データを外部プログラムにエクスポートする必要があります。Altium Designerでは、回路図を新しいPCBレイアウトとしてすばやく設計するなど、あらゆる作業を行うことができます。
降圧コンバータの回路が完成したら、回路図エディターのシミュレーション ツールを利用できます。回路の降圧コンバータ シミュレーションを行うには、次のステップを完了する必要があります。
- 電圧ソースを定義する。[Components] パネルのSimulation Sources.IntLibコンポーネントライブラリから、さまざまなシミュレーションソースにアクセスできます。ここでは、DC入力 (または、整流されたAC入力) と、ハイサイドMOSFETをスイッチングするPWMソースをシミュレーションする必要があります (詳細については以下を参照)。
- 必要な測定を行うためのプローブを配置する。Altium DesignerのSPICEエンジンは、各種のネットと個々のコンポーネントの電流、電力、電圧を返します。回路図に電圧、電流、電力のプローブを配置して、特定のノードやコンポーネントの測定データを集めることもできます。
- シミュレーション プロファイルを作成する。回路図エディターが開いている状態で、メイン メニューバーの [Simulate] ボタンをクリックします。[Edit MixedSim] プロファイルをクリックすると、全てのSPICEシミュレーション機能を利用できます。必要に応じて、プロファイルの名称や他の多くの設定を変更することも可能です。
降圧コンバータ シミュレーションの目的は、PWM信号のデューティサイクル、負荷、および他のコンポーネントが、降圧コンバータからの電力出力にどのような影響を及ぼすかを調べることです。また、リップルも、理想的にはAC電源と整流器ブリッジを使用した状態で調べます。基本的な降圧トポロジー (上記を参照) から開始し、適切なコンポーネントを選択してから機能を追加するとよいでしょう。
PWMソースのモデル化
PWMソースは、パルス形式のソースを使用してモデル化できます。ここでは、上記の回路図に電圧ソースを配置しますが、MOSFETのゲートに特定の電流を供給する必要があります。シミュレーションでは、電流ソースをVPULSEとして配置するか、VPULSEと直列に抵抗を配置します。どちらの方法でも、MOSFETをスイッチングするPWMソースを定義できます。
全てのAC、またはスイッチング ソースには、下流デバイスに供給できる最大電流が決められているため、電力コンバータ回路の動作を調べるときは、電圧制御の電流ソースを使用することをおすすめします。スイッチング周波数とデューティ サイクルを設定するには、[Properties] パネルから電圧ソースのシミュレーション情報を開きます。パルスの幅 (デューティ サイクル) と期間 (周波数) を変更して、モデル化されたPWMソースを調整します (以下の設定を参照)。
上記のシミュレーション設定では、良質な100nsの低速で立ち上がるパルス エッジが使用されています。パルス幅と期間はかなり大きいため、モデル化にはこれで十分です。PWMソースを定義したら、いくつかの分析を有効にして、シミュレーション プロファイルで実行します。
降圧コンバータシミュレーションで調べる内容
降圧コンバータシミュレーションで調べる重要な点は過渡動作です。証明できる限り、ポールゼロ解析を行う必要はありません。これは、トランジスタの負のフィードバックによって、降圧コンバータからの出力が制限サイクルに突入するためです。そのため、発振するPWM信号がどのように出力電圧に変換されるかを調べるだけで済みます。これについては、簡単な過渡解析を使用して時間領域で行うのが最適です。
なお、入力/出力にEMIフィルターを配置し、PFC回路を使用していない限り、コイルが正しいサイズであれば伝達関数を抽出する必要はありません。望ましいリップル電流、必要なコイルのサイズ、PWMパラメーター、入力電圧は、次の式に従う必要があります。
ここでも、FETの帯域幅制限効果を気にしなくて済むように、通常は十分に低い周波数を使用します。適切なPWM周波数とエッジレートの選択については、こちらの記事を参照してください。
回路設計によるレイアウトへの移行
電力コンバータ回路が完成し、システムの他の部分と接続する準備が整ったら、いくつかの方法を使用できます。
- 回路を階層回路図に統合する:高レベルの回路図がある場合は、Altium Designerの階層設計機能を使用して、コンバータをより大きなシステムに組み込むことができます。複雑なシステムでこれを行う方法については、こちらをご覧ください。
- PCBレイアウトを作成する:コンバータが独自に動作するなら、統合された回路設計ツールを使用してレイアウトを作成するだけで作業が完了します。回路図から新しいレイアウトを作成するためのガイドについては、こちらをご覧ください。
新しい基板のレイアウトを行う準備が整ったら、PCBを作成し、統合された回路設計ツールを使用して、コンポーネントを新しいレイアウトにインポートします。これで、新しいレイアウトのコンポーネントを配置できるようになります。
スイッチング コンバータを設計した経験があれば、回路に多くのノイズが発生することをご存じでしょう。基本的にはFETのスイッチング時に強い磁場が発生し、下流回路のどこかに電流が誘導されることでノイズが発生します。もう1つはリップルの問題ですが、これはコンバータで伝搬され、出力にノイズとして出現します。降圧コンバータ回路のどこかで誘導されるEMIは、スイッチングノイズと外部RFソースのどちらが原因かにかかわらず、出力ステージが絶縁されていなければ出力信号として出現します。スイッチングコンバータからのノイズを抑制する方法について詳しくは、こちらの記事をご覧ださい。
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ここで述べたのは、Altium 365でAltium Designerを使用して行える作業のごく一部にすぎません。より詳細な機能については、製品ページまたはリソースページ内のAltium 365関連コンテンツをご覧ください。
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